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最高裁判所第三小法廷 平成2年(行ツ)140号 判決

静岡県三島市大社町五番一号

上告人

市川隆一

東京都千代田区霞が関三丁目四番三号

被上告人

特許庁長官 植松敏

右当事者間の東京高等裁判所昭和五五年(行ケ)第四〇四号審決取消請求事件について、同裁判所が平成二年四月二五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 四ツ谷巖 裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 大堀誠一 裁判官 橋元四郎平)

(平成二年(行ツ)第一四〇号 上告人 市川隆一)

上告人の上告理由

第一点 原判決の判断に判決に影響をおよぼすことが明らかな採証法則の違背がある。

すなわち、

1 本件特許出願発明の特許請求の範囲は、平成二年四月二五日判決言渡を受けた判決原本第二請求の原因の二本願発明の特許請求の範囲(第四頁第二行ないし第五頁第六行)に記載された「本文記載の目的において本文に詳記し且図面に一例を示す如く、互いに同方向に回転し入口より出口に向ってらせん体の外径を同じにしらせん翼のピッチを次第に小さくしたらせん体の一対を、軸方向及びこれと直角方向において間隙を設け相互に入り込むように並列しかつ並列

する兩らせん体の軸間距離は小さくとも兩方のらせん翼外周点の回転面(回転面の円周)にそれぞれ縦にとおる法線と法線の交線(双眼円孤状筒型外筒1、2内の共通弦面空間12、12')に交るらせん翼外周縁点をよこぎるそのらせん翼外周縁点の回転円の有方向接線(21、22)が相手らせん体のらせん翼底を形成する円に共通内接線として接するかまたは接しないで離れて通るように兩らせん体の軸間距離を大きく引離して並列しもしくは更にらせん翼底面の半径を小さくしおよび小さくせず、らせん翼外周面と相手らせん翼底面との間に遠心力放射うちつき流出間隙(23、24)を存置してこれらを外筒内に並設

するようにそれぞれ形成した等周速漸減ピッチらせん体を並列に用いた遠心合力調和容積減速軸流型同方向性ねじ圧縮機、ねじポンプ。」(昭和四二年四月五日付訂正明細書(甲第二三号証)第一〇頁第一二行の「本文記載の目的」の記載から第一一頁第一一行の「ポンプ。」までの記載および第二頁第八行ないし第九行の「外筒(双眼円孤状筒型外筒と仮称)内の共通弦面空間」の記載並びに昭和三〇年一〇月一九日付訂正図面第二図(甲第九号証の二)の図面中の双眼円孤状筒型外筒1、2内の共通弦面空間12、12'、円周接線21、22、遠心力放射うちつき流出間隙23、24の記載等参照)であって、その目的と

するところは「ポンプの圧力比を大きくせんとする場合において、兩らせん翼相互はめあい個所に存置する軸方向の間隙(25)およびこれと直角方向の間隙(23、24)による各種の流体の漏洩、逆流等を該遠心力で放出する流体の流出分の運動量配分量により防止できるようにし、所要の流量と圧力比を得んとする場合において、高周速回転をするとき、外回り翼の揚力を減少せんとする逆作用を防止する作用、効果を得られるようにして、外筒の外部にある空気、水等の各種の流体を大気の圧力を利用して外筒内に円滑に導入することができるようにし、且軸長を短かくできるようにし、ポンプ効率を高くできるようにし、その性能を向上せんとするにあり。」(右に同じ訂正明細書(甲第二三号証)第六頁第三行ないし五行の「その運動した流体は互に相手のらせん翼4、6の斜面の正面部に移行するようにし(これによって、間隙23、24に流体による抵抗帯を形成して漏浅、逆流を防止するようにし)、その背面部に直接移行するのを防止して(外筒内に流体を円滑に導入することができるようにし)効率を高くできる」の記載並びに、第三頁第一四行の「ポンプの圧力」の記載から第四頁三行の「向上できる。」までの記載等参照)である。

2 昭和四二年四月五日付訂正明細書(甲第二三号証)第四頁第一〇行ないし第五頁第一一行の「且4の外周縁点……ものである。」の記載は『且らせん翼4の外縁上の点の回転面の円周に縦にとおる従法線と相手のらせん翼6の外縁上の点の回転面の円周に縦にとおる従法線との兩らせん翼の外縁の対向部における交線、すなわち、共通従法線(なお 外形が円錐台形のらせん体の場合は円錐母線と円錐母線との交線)に接するらせん翼4の外縁上の点をよこぎるその外縁上の点の回転円の円周接線22が相手らせん体のらせん軸胴5の回転円に共通内接線として接するようにらせん体3、5の軸中心距離を大きく引離すように3と5を位置させて並列するよう

にして遠心力放射うちつき流出間隙(なお、「うちつき流出」は「共通内接線に沿う方向に流出」の意味である)23を存置するようにし、同称にして他方の共通従法線に接するらせん翼6の外縁上の点をよこぎるその外縁上の点の回転円の円周接線21が相手のらせん体のらせん軸胴3の回転円に共通内接線として接するようにして遠心力放射うちつき流出間隙24を存置するようにし、並列したらせん体3と5をその外形に沿う形状の室内を形成する外筒1、2内に回転可能に並設するようにし、外筒の兩円形室内に収容したらせん体3、5は円形室の入口側と出口側に設ける案内羽根と少しの間隙をおいて案内羽

の中心側で支持する軸受17、18にて支〓し、らせん体3、5の軸受17より突出する部分には同一大きさの組合せ齒車19を固着するようにし、これらを中間齒車を介して同一方向に同一回転数で回転することができるようにし、軸受18を支持する案内羽根部分には導入口8を、軸受17を支持する案内羽根部分には出口16をそれぞれに設けたものである。』(前記した、昭和六二年六月一日付原告準備書面(第六回)七丁表六行の「昭和四二年四月五日付訂正明細書」の記載から八丁裹三行の「ものである。」までの記載)と補正する用意がある。

3 昭和六二年二月一六日付被告答弁書二丁裹二行な

いし大行で「(二)明細書第八頁ないし九頁の、境界層に関する記載およびジエツト機に利用した場合の利点に関する記載は、その趣旨及び理由が不明であり、本願発明により、何故、ジエツト機の前進抵抗を小にし、機速を一層速くでき、燃料消費を少なくできるのか全く理解できない。」(右に同じく、被告答弁書二丁裹二行の「(二)明細書第八頁ないし」の記載から六行の「全く理解できない。」までの記載)と指摘されている。

けれども、それらの点は、昭和六二年六月一日付原告準備書面(第六回)一四丁表一〇行ないし一五丁裹一一行の「例えば、本願発明のねじ圧縮機、ね

じポンプ等を定置用として用いるときは、前記した遠心力放射うちつき流出間隙23、24等を存置したことによつて、外筒の欠円個所を通過するらせん翼の遠心力でそのらせん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量をして兩らせん軸中心線を通過する方向に流出するようにして間隙23、24に流体による抵抗帯を移成するようにして漏洩、逆流を防止することができるようにすると同時に、その背面に移行しないようにしたことによつて背面に起るべき大気圧以下の吸上げ圧力を減少しないようたし、これによつて、外筒の外部にある空気、水等の各種の流体を大気の圧力を利用して外筒内に円滑に導入でき

るようにしていることは明らかに推測されるものである。しかしながら、本願発明のねじ圧縮機をジエツト機の推進装置、または入口と出口を反対にして用いるねじポンプを超高速船の推進器等に応用する場合はジエツト機の機速、超高速船の船速等による押し込みによつて、外筒入口側のらせん翼の迎え角斜面の背面の表面に関しては、ジエツト機の推進装置の場合は機速による押し込みによつて背面(進行方向に向つている方のらせん翼面)の表面に近づく程に空気の密度大となり、また超高速船の場合は超高速の船速による押し込みによつて、進行方向に向つている方のらせん翼面(すなわち、らせん翼の

迎え角斜面の背面)の表面に海水の圧力が浸透するようになって、いわゆる気温の逆転と同称に、らせん翼の迎え角斜面の正面と同じくその背面の表面の境界層の流体も乱流の状態は発生し難くなることは予想できる。そこで、らせん体を更に一層次第に高速度で回転するときは、らせん翼背面の表面の境界層の各種の流体は外筒の欠円個所を通過するらせん翼の遠心力で該らせん翼の外側から速度の方向に流出するとき、背面の境界層の各種の流体の輻流(半径流)方向の速度大となるため、いわゆるベルヌーイの定理により、速度を高めて圧力を下げることによって、前記したジエツト機の機速、超高速船

の船速等の押し込みに費消するエネルギーは、らせん体の高速度回転力によつてそれだけ代替することによつて該押し込みによる抵抗力をそれだれ減少消減することができるようにし、同時に間隙23、24を存置に兩らせん体を並設するようにしたことによつて、前記した輻流(半径流)方向に速度大となる流体の運動量を相手のらせん翼の迎え角斜面の正面に相対的に動くようにし、らせん翼外綠の対向部における相手らせん翼の回転とは逆の方向に移行運動するようにして間隙23、24に流体による抵抗帯を連続的に形成し、同時に流体の共回り運動を防止しつつ漏浅もしくは逆流を防止する能力を追加することが予

想できるところかみて、従つて、極超音速に対応するエンジンを統合したものとすることもあるところからみて、説明がつくものである。」(前記した、原告準備書面(第六回)一四丁表一〇行の「例えば」の記載から一五丁裹一一行の「説明がつくものである。」までの記載参照)としている。

4 右に同じく、被告答弁書二丁裹二行ないし四行で「境界層に関する記載及びジエツト機に利用した場合の利点に関する記載は、その趣旨及び理由が不明」と指摘されている点については、なお次のとおり補正の用意がある。

(1) 昭和六二年一〇月五日付原告準備書面(第六回の二)一丁裏八行ないし-一行の「(1)「境界層の流体の遠心力作用に関係のある霧吹き類似の現象にもとづく揚力の逆転」および「降下速度に関係のある境界層の流体の霧吹き類似の現象にもとづく昇降舵の舵の逆効き」」について。

イ いわゆる、霧吹き現象は周知事項であるといえる(昭和六二年一〇月五日付原告凖備書面(第六回の二)一丁裏末行の「イ 霧吹きは」の記載から二丁裏八行の「のである。」までの記載参照)。

ロ 前記した「境界層の流体の遠心力作用に関係のある霧吹き類似の現象にもとづく揚力の逆転」と仮称する事項については、次の記載からみて予想できるものであるといえる。

(イ) 船の一本軸のスクリユー、プロペラの揚力の逆転については、右に同じく原告凖備書面(第六回の二)二丁裏九行ないし四丁表四行の「ロ」の項目中の記載からみて説明がつくものである(前記した原告凖備書面(第六回の二)二丁裏九行の「高速力で航行中の船を急速停止」の記載から四丁表四行の「と仮称する。」までの記載参照)。

(ロ) 可変ピッチプロペラの飛行機のときは、例えば、厳しい寒波の襲来で気温が急に降下す

る現象で、地上の空気の密度大となっているとき可変ピッチプロペラの推進力の逆転でブレーキ(制動)をかけたとき、場合によっては、予期しない逆の推進力を出すようになることがある点については、昭和六三年五月一〇日付原告証拠方法補充書三丁裏四行ないし四丁表五行の「プロペラ機のリバース(プロペラを逆回転又は可変ピッチプロペラの回転中にピッチを逆にして、着陸後逆推力を生ぜしめて、ブレーキをかけること)したとき、例えば、…、…、…、…、…、…、「前記した、リバースに問題の見出しの記事欄」

(甲第二八号証)七行ないし一一行の「、、機長は「リバース(プロペラを逆回転又はピッチの逆転でブレーキをかけること)したが庁一方だけしかかからなかった」と言った。」の所載事項、同じ(甲第二八号証)一五行ないし二一行の「事故当時コントロール、タワーにいた、管制官が「着陸の許可を出すと機は普通の態勢で滑走路の九十メートル附近に着地、五百メートルぐらいでリバースしたが、一メートルぐらい浮き上がり、そのまま飛び続けてぶつかつた。」ということばもリバースに問題のあったことを裏書きしている。」の所載事項(昭和三九年二月二七日大分県大分空港における富士旅客機の事故に関する昭和三九年二月二八日付日本経済新聞朝刊第一五面第九段中央部の「リバースに問題」の見出しの記事欄七行ないし-一行の所載事項、同一五行ないし二一行の所載事項等(甲第二八号証)からみても推測できるといえる」(前記した、昭和六三年五月一〇日付原告証拠方法補充書三丁裏四行の「プロペラ機のリバース」の記載から四丁裏五行の「推測できるといえる」までの記載参照)からみて説明がつくものである。

ハ 前記した「降下速度に関係のある境界層の流体の霧吹き類似の現象にもとづく昇降舵の舵の逆効き」と仮称する事項については、次の記載からみて予想できるものであるといえる。

(イ) 前記した、昭和六三年五月一〇日付原告証拠方法補充書五丁表六行ないし六丁表六行の「昭和六三年二月五日付原告凖備書面(第六回の二)五丁表四行ないし七行の「急降下するジエツト機の噴流の噴出が可動翼(昇降舵)下面の下側に向って、やや前の位置から噴出する構造のもの「例えば、F-1支援戦闘機」は前記した逆作用(降下速度に関係のある境界層の流体の霧吹き類似の現象にもとづく昇降舵の舵の逆効き)を阻止する見込みがある」の記載に関する「(例えば、F-1支援戦闘機)は、急降下するジエツト機の噴流の噴出が可動翼(昇降舵)下面の下側に向って、やや前の位置から噴出する構造のものである。」ことを証する。および前記した原告凖備書面(第六回の二)五丁表四行ないし六行の「急降下するジエツト機の噴流の噴出が可動翼(昇降舵)下面の下側に向って、やや前の位置から噴出するようになっている構造のもの(例えば、F-1支援戦闘機)」は、可動翼(昇降舵)の下面を流れている空気が、遷音速の速度域の急降下のとき、昇降舵の上面を流れている空気と合流しないようになるのを、前記した可動翼(昇降舵)の下面の下側に向ってやや前の位置から噴出したガスの噴流の運動量によって抑制するようにし、その合流を継続させることができるものとする。これによって、右に同じ原告凖備書面(第六回の二)五丁表末行ないし同裏一行の「降下速度と関係のある境界層の流体の霧吹き類似の現象」の発生を抑制することができるようにし、従って同二行の「昇降舵の舵の逆効き」を防止できるものといえる。」(前記した昭和六三年五月一〇日付原告証拠方法補充書五丁表六行の「昭和六三年二月五日付原告凖備書面」の記載から六丁表五行ないし六行の「防止できるものといえる」までの記載参照)からみて説明がつくものである。

5 平成二年二月二四日付原告証拠方法補充書(第二回)提出の目的は、昭和四二年四月五日付訂正明細書(甲第二三号証)第一一頁第六行ないし第九行中の「らせん翼の外周面と相手らせん体のらせん翼底面との間に遠心力放射うちつき流出間隙(「うちつき流出」は「共通内接線に沿う方向に流出」の意味である)を存置にこれらを外筒内に転軸可能に並設するようにそれぞれ形成」したことによって、同じ訂正明細書(甲第二三号証)六頁三行ないし五行の「その運動した流体(外筒内の欠円個所12、12'を通過するらせん翼4、6の遠心力で該らせん翼の外側から速度の方向(円周接線21、22に沿う方向を一例)に流出する流体の運動量)が互に相手のらせん翼4、6の迎え角斜面の正面部(らせん翼の斜面と流体とが運転軸と平行なるような方向において押し合う迎え角斜面の正面部)に相対的に動くようにして移行するようにし、その背面部に直接移行するのを防止」することによって、前記した、外回り翼の

揚力を減少せんとする逆作用を防止するようにし、外筒の外部にある空気、水等の各種の流体を大気の圧力を利用して外筒内に円滑に導入することができるようにする作用、効果(外回り翼の揚力を減少せんとする逆作用を防止する効果)を得られることが類推することができるといえることを証することを目的として提出するものである。」(前記した平成二年二月二四日付原告証拠方法補充書(第二回)一丁表未行の「本証拠方法提出の目的」の記載から四丁裏四行の「提出するものである。」までの記載、同四丁裏六行の「甲第三〇号証」の記載から五丁表三行の「所載事項 写 一通」までの記載、同五丁表四行の「甲第三一号証」の記載から一一行の「所載事項写一通」までの記載、および五丁表未行の「右甲第三〇号証、甲第三一号証等の所載事項」の記載から九丁裏五行の「類推することができるものである。」までの記載中、特に、八丁表九行ないし同裏六行の「したがつて、前記した甲第三〇号証の「墜落機は同艦のマストとほぼ同じ高さで飛行、三千メートル先で緩やかに右旋回したが、その際、右翼が海面を切り、そのまま三百メートル進んで機首が海面に突つ込み、三十-四十メートルの火柱と黑煙を上げて炎上した。二度目の接近から墜落まで約三分.」の事故につながつたのは、前記した「遠心力作用にもとづく境界層による輻流(前記した「軸流」は「輻流」の意味である)方向の短絡漏洩」と仮称する事項による、外回り主翼の揚力を減少する逆作用により、外回り主翼、内回り主翼、昇降舵の働いている尾翼等の予期しない三点同時降下現象であることが推測できるといえる」までの記載並びに同じ証拠方法補充書(第二回)九丁裏六行の「二 甲第三二号証」の記載から一一行の「所載事項 写 一通」の記載、同九丁裏

末行の「右甲第三二号証所載事項からみて、」の記載から一一丁表一行の「当する。」までの記載中、特に、一〇丁表五行ないし同裏一〇行の「前記した主翼の先端を直角に切取つていないもの、主翼の先端に補助タンク状のもの、堅板等を取付けていないもの等は、特に金属製の主翼外縁の下面と上面の境界層の連絡が比較的に容易な飛行機の旋回中の揚力の減少については注意をする必要がある。前記した、日没後いわゆる気温の逆転で乱流の状態は発生し難くなつた低空で、急旋回飛行(前記した甲第三〇号証のバジヤー偵察幾よりも急旋回飛行)をするときは、外回り主翼外縁の下面の境界層の流体の遠

心力作用で周囲程高圧となる流体が圧力負の上面の境界層の外側の圧力の低い流れの中に流入、拡散するという原因によつて、外回り主翼の揚力を減少するという結果を招くことによつて、外回り主翼、内回り主翼、昇降舵の働いている尾翼等の三点が、予期しない同時降下をするため、予定高度を維持(確保)できないで事故を起すおそれがある。」(同じ証拠方法補充書(第二回)一〇丁表五行の「前記した主翼の先端を直角に切取つていないもの、」の記載から同裏一〇行の「おそれがある。」までの記載)、同じ証拠方法補充書(第二回)一一丁表二行の「甲第三三号証の一」の記載から一〇行の「所載事項写 一通」までの記載、同一一丁表一一行の「甲第三三号証の二」の記載から一二丁表五行の「写一通」までの記載、同一二丁表六行の「甲第三四号証」の記載から同裏七行の「写 一通」の記載、および同一二丁裏一〇行ないし一三丁表六行の「昭和四一年二月四日全日空機(ボーイング727型、丁A8302)羽田沖墜落事故のきつかけは、千葉上空から多摩川寄りのC滑走路にはいる直前の所まで直行し、滑走路にはいるため、ほぼ九〇度右旋回したことになるのが推測される。その際、主翼が海面を切る角度は、前記した甲第三〇号証のバジヤー偵察機が自衛隊の輸送艦「ねむろ」のマストとほぼ同

じ高さで飛行、三千メートル先で緩やかに右旋回した。その際、右翼が海面を切る角度よりも全日空旅客機(丁A8302)の右主翼が海面を切る角度の方が急角度であったことが推測される。」(同じ証拠方法補充書(第二回)一二丁裏一〇行の「昭和四一年二月四日全日空機(ボーイング727型)の記載から一三丁表六行の「を切る角度の方が急角度であつたことが推測される。」までの記載)等参照。

等としたのに。

判決、理由、二の5、四五頁六行ないし四六頁二行で

「しかし、本願明細書八頁八行から九頁一六行までに記載された境界層に関する記載及びジエツト機に利用した場合の利点に関する記載は、それ自体としても、境界層がどのように形成され、どのように移行するのか、ジエツト機に利用した場合にどのような利点があるのか及びその根拠の具体的な説明がないので、内容が理解できないし、請求の原因四5のように言葉を補い、語句を補正しても、それらを理解することはできない。」(判決原本四五頁六行の「しかし、本願明細書」の記載から四六頁一行ないし二行の「それらを理解することはできない。」までの記載)とされた。

第二点 原判決は、本件特許出願の発明はらせん翼の外周面と相手らせん体のらせん翼底面との間に遠心力放射うちつき流出間隙(「うちつき流出」は「共通内接線に沿う方向に流出」の意味である)を存置に形成したことによつて、外筒の共通弦面空間(欠円個所)12、12'を通過するらせん翼4、6の遠心力で該らせん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量が相手らせん翼の迎え角斜面の正面(らせん翼斜面と流体とが運転軸と平行なるような方向において押し合う迎え角斜面の正面)に相対的に動くようにして移行するようにし、同時にその背面に移行しないようにしたことによつて、自然現象を利用することができるようにし、従つて、外回り翼の揚力を減少する逆作用を防止することができるようにし、これによつて、外筒の外部にある流体(空気、水等)を大気の圧力を利用して外筒内に導入することができるようにした格別顕著な作用、効果を看過してした違背がある。理由は次のとおりです。

1 昭和三〇年一二月七日付拒絶理由通知書(甲第一〇号証)の理由中に挙げられた引例「英国特許第六三二三六四号明細書拔粹(グループ二六)」(甲第一二号証)、昭和五五年一一月七日付審決の理由中に挙げられた引例「英国特許第六二〇六八四号明細書拔粹」(甲第二五号証)(昭和五七年六月九日付原告準備書面(第二回)三丁表三行ないし九行の「第二 書証追加補充提出」の項の記載参照)の英国特許の引例のように、外筒内で並列して同一方向に回転するねじ棒のねじ山と相手ねじ芯との間の隙間を小さくしてあるものを空気、水等の回転ポンプとして用いるときは、外筒円形室の欠円個所を通過し初めた当初の遠心力放射流出開始点(遠心力放射流出始点)におけるねじ山の外側から速度の方向に流出する流体の運動量のうち、ねじ山の外縁の回転円と相手ねじ芯の回転円との共通外接線に沿う方向に流出する流体の運動量は勿論、たとえ、共通内接線に沿う方向に流出する流体の運動量も、前記した、ねじ山と相手ねじ芯との間の隙間を小さくしてあるため兩ねじ軸中心線(ねじ棒対で、ねじ山の中心を結ぶ兩ねじ棒の軸に垂直の直線)の通過を阻止される結果、方向変換をして兩ねじ軸中心線の延長上で交わる方向、または共通外接線に沿う方向に運動するようになるもの等は、ねじ山の迎え角斜面の背面に移行運動するようになるため、ねじ山の外回り翼の揚力を減少するように逆作用し、従って、ねじ山の背面と流体とが引き合う力を(すなわち、吸引力を)減少し、これによって、外筒の外部にある空気、水等を大気の圧力および入口の押し込み力等を利用して外筒内のねじ山間に導入、充填する作業

を阻害する逆作用を防止することができないものであることが推測できる。従って、前記した、英国特許第六三二三六四号明細書拔粹〔グループ二六〕(甲第一二号証)、英国特許第六二〇六八四号明細書拔粹〔グループ二六〕(甲第二五号証)等の引例のものは、前記した、外回り翼の揚力を減少する逆作用を防止することができないため、たとえ、外筒内ではねじ棒の回転によるねじ押して流体を移送、圧送して出口より送り出す状態になっていても、ねじ棒を更に一層次第に高速度で回転するようにするときは、外筒内のねじ山間に流体を、大気の圧力を利用して導入、充填することが、次第に又は急激に困難

になることが予想できるものである。従って、場合によっては、結局、ポンプ作業にしないようになることが明らかに推測することができるものである(平成元年七月三日付原告準備書面(第七回)一〇丁表五行の「五前記した本願の発明に対し、引例の英国特許」の記載から一一丁裏八行の「明らかに推測することができる」までの記載参照)。

2 これに対し、本願の発明は、平成元年七月三日付原告準備書面(第七回)八丁表六行ないし一〇丁表四行の「本願の発明は、前項二、三のイ、ロ、ハ、ニ等の項目中に記載した得点、すなわち、材料技術、加工技術の進歩と相俟って、外筒内で並列に用い

る兩らせん体を更に一層次第に高速度で回転するようにしても外筒内のらせん翼間に流体を(大気の圧力、入口の押し込み力等を利用して)導入、充填する作業を阻害する逆作用(外回り翼の揚力を減少逆作用)を防止することができるようにするものであることが推測できる。これに加えて(前記した「これによって」は「これに加えて」の意味である)、ジェット機のエンジン外筒内に大気中の空気を機速により押し込むときの抗力を(らせん翼の背面に押し付けで圧力を高めた空気の輻流方向の流速を高めて圧力を低下するようにし)エンジンの回転力で減少するようにして超高速ジェット機の機速を

できるだけ低下せしめないようにすること、および従來周知の軸流圧縮機の回転翼と固定翼の組み合わせのうち、固定翼のみを合理的に省略することができるようにし、翼と気流との相対速度が超音速となるものでも、この状態で効率高く作動させることができる見込みがあること等の得点があることは明らかに推測できるものである。そして、これらの得点を現出するようにする、そのもとはいえば(その基本は)、前記した一の項の「特許請求の範囲」による本願発明の要旨にもとづく構造、方法により、特にポンプに用いるときは外筒内で並列して同一方向に回転する兩らせん体を用いることを必須の要件

とする(本願の発明系においては、ポンプおよび原動機等において、並設するらせん体の間に所要に大きい間隙(遠心力放射うちつき流出間隙)を存置するという構成上の条件は何れも同じでありますが、これに対し構造上の条件は兩者全く異なるものである。すなわち、圧縮機、ポンプは同一方向に回転するらせん体を並列に用いることを必須の条件とし、これに対し原動機は互に反対方向に回転する左右ねじ棒を並列に用いることを必須の条件とするものである)ようにし、従って、圧縮機、ポンプ等においては、同一方向に回転するらせん翼の外縁と相手らせん体のらせん翼底面との間に所要に大き

い間隙(遠心力放射うちつき流出間隙、なお「うちつき流出」は「共通内接線に沿う方向に流出」の意味である)を存置に、これらを外筒内に回転可能に並設したことによって、外筒円形室内を高速度で回転するらせん体により回転運動する空気、水等の各種の流体は周囲ほどその圧力が高くなる。それで、外筒の欠円個所を通過するらせん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量をして、兩らせん軸中心線を通過する方向に流出するようにし、同時にその中心線の延長上で交わる方向に流出しないようにし、従って、相手らせん翼の迎え角斜面の正面に相対的に動くようにして移行するようにし、兩らせ

ん翼の対向部における相手のらせん翼の回転とは逆の方向に運動するようにしてらせん翼間にある流体の共回り運動を防止するようにし、同時にその背面に移行しないようにしたことによって背面に起るべき大気圧以下の吸上げ圧力を減少しないようにし、背面と流体とが引き合う力(吸引力)を減少しないようにして外筒の外部にある流体を大気の圧力、入口の押し込み力等を利用して外筒内のらせん翼間に導入、充填する作業を阻害する逆作用(外回り翼の揚力を減少する逆作用)を防止することができるようにしたからである。」(前記した平成元年七月三日付原告準備書面(第七回)八丁表六行の「本願の発明は、前項二、三」の記載から一〇丁表四行の「したからである。」までの記載参照)。

3 前記した「遠心力で運動する流体により外回り翼の揚力を減少する逆作用」については、平成二年二月二四日付原告証拠方法補充書(第二回)七丁表一行ないし九丁裏五行の「3前記した、外回り翼の揚力の減少については、平成元年七月三日付原告準備書面(第七回)五丁裏七行ないし六丁裏回行の「外筒内の空気、水等の各種の流体が次第に高圧になってくるときは、らせん翼の迎え角斜面の正面の境界層と同称に、その外周面の境界層の流体も乱流の状態は発生し難くなっている外周面の境界層を経て、らせん翼の迎え角斜面の正面の境界層の流体のうちでも、外回り程遠心力作用で高圧となる外縁の境界層の高圧の流体部分が圧力頁の背面の外縁の境界層の近傍に移行した先行部分が、圧力員の背面の境界層の半径流軸方向に向って逆に流入せんとするや、否や、今度は背面の遠心力で逆の流入を阻止される結果、ベルヌーイの定理により、速度を下げて圧力を高めてらせん翼の表面または表面の金属面に係わる反力として保持して先行部分は靜止する。靜止すれば後続部分が衝突して先行部分はらせん翼の表面または表面の金属面から剥離する。このくりかえしによって、らせん翼の表面または表面の金属面

から、連続的に剥離する境界層の流体は、背面の圧力の低い流れの中に流入、拡散運動する(上述の流体の流入、拡散運動をする事項を「遠心力作用にもとづく境界層による輻流方向の短絡漏洩」と仮称する)事項によって、翼の迎え角斜面の背面に起るべき大気圧以下の吸上げ圧力を減少するように逆作用」(右に同じ原告準備書面(第七回)五丁裏七行の「外筒内」の記載から六丁裏三行ないし四行の「吸上げ圧力を減少するように逆作用」までの記載参照)からみて、前記した、外回り主翼の揚力の減少および外回り主翼、内回り主翼、昇降舵の働いている尾翼等の予期しない三点同時降下現象等は説明がつ

くものであるといきることが窺える。したがって、前記した甲第三〇号証の「墜落機は同艦(自衛隊の輸送艦「ねむろ」)のマストとほぼ同じ高さで飛行、三千メートル先で緩やかに右旋回したが、その際に右翼が海面を切り、そのまま三百メートル進んで機首が海面に突っ込み、三十-四十メートルの火柱と黑煙を上げて炎上した、二度目の接近から墜落まで約三分、」の事故につながったのは、前記した「遠心力作用にもとづく境界層による輻流方向の短路漏洩」と仮称する事項による外回り翼の揚力を減少する逆作用および外回り主翼、内回り主翼、昇降舵の働いている尾翼等の予期しない三点同時降下現象であることが推測

できるところからみて、前記した昭和四二年四月五日付訂正明細書(甲第二三号証)第一一頁第六行ないし第九行の「らせん翼の外周面と相手らせん体のらせん翼底面との間に遠心力放射うちつき流出間隙(「うちつき流出」は「共通内接線に沿う方向に流出」の意味である)を存置にこれらを外筒内に転軸可能に並設するようにそれぞれ形成」(前記した訂正明細書(甲第二三号証)第一一頁第五行の「らせん翼の外周面」の記載から第九行の「形成」までの記載参照)としたことによって、同じ訂正明細書(甲第二三号証)六頁三行ないし五行の「その運動した流体は互に相手の4、6(相手のらせん翼4、

6)の斜面の正面部に移行するようにし、その背面部に直接移行するのを防止し」することによつて、前記した、外筒の欠円個所を通過するらせん翼の遠心力で該らせん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量をして、らせん体を更に一層次第に高速度回転をするようにしても、外回り翼の揚力を減少する逆作用を防止できるようにし、従つて、らせん翼の背面と空気とが引き合う力(吸引力)を減少しないようにし、外筒の外部にある流体を大気の圧力を利用して外筒内に円滑に導入できるようにする作用、効果を得られるようにすることが、前記した、甲第三〇号所載の事故につながる遠心力作用からみて類推することができるといえるものである。」(前記した平成二年二月二四日付原告証拠方法補充書(第二回)七丁表一行の「3 前記した、外回り翼の揚力の減少」の記載から九丁裏五行の「類推することができるといえるものである。」までの記載参照)からみて類推できるものである。

等としているのに、

判決、理由、三の3、五三頁二行ないし九行で「本件審決が、拒絶理由に例示した点として引用する、請求の原因三3の(一)ないし(六)の諸点は、いづれも本願明細書中の、本願発明において前記のような間隙が存置されてもなお流体の漏洩、逆流等が生じず、ポンプ、圧

縮機として機能することを当業技術者が理解するのに不可欠の説明にあたる個所の意味が不明あるいは理解できないとするものであるところ、前記二のとおり、これらの点についての本件審決の認定判断を誤りとする原告の主張はいずれも認められない」とされた。

よつて、

原判決は、本件特許出願の発明はらせん翼の外周面と相手らせん体。らせん翼底面との間に遠心力放射うちつき流出間隙(「うちつき流出」は「共通内接線に沿う方向に流出」の意味である)を存置するように形成したことによって、外筒の共通弦面空間(欠円個所)12、12'を通過するらせん翼4、6の遠心力でそのらせ

ん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量が相手らせん翼の迎え角斜面の正面に相対的に動くようにして移行するようにし、同時にその背面に移行しないようにしたことによって、自然現象を利用することができるようにし、従って、外回り翼の揚力を減少する逆作用を防止することができるようにし、これによって外筒の外部にある空気、水等を、大気の圧力を利用して外筒内に吸引力で円滑に導入することができるようにした格別顕著な作用、効果を具備するものであることを着過してした違背があり、民事訴訟法第三百九十四条に該当する。

以上いづれの論点よりするも原判決は違法であり破棄さるべきものである。

以上

(添付書類-原判決正本写し-省略)

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